EC・eコマース事業者にとって、商品送付だけで終わってしまっては、もったいないチャンスを逃しています。顧客データを活用したダイレクトメール(DM)やサンプル、セール情報の同梱により、リピート率向上と顧客単価アップが実現できます。
本記事では、DPS(データプリントサービス)を活用した通販・EC業界のDM戦略について、具体的な活用シーン、ROI計算、成功事例をご紹介します。
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EC・通販業界が直面するDM課題
課題①:購買データが活用されていない
多くのEC事業者は、顧客の購買履歴、閲覧データ、会員情報を持ちながら、それを活用したDM送付ができていません。その理由は以下の通りです。
- 自社内でDM作成・発送する人員がいない
- 宛名入れや封入作業に膨大な時間がかかる
- 小ロット対応の印刷業者が見つからない
- セキュリティ上の不安(個人情報の管理)
課題②:リピート率の低下
初回購入後、顧客との接点がメールやLINEだけになると、離脱率が高まります。特にファッションや食品などの業界では、物理的なDM(紙)での接触が有効です。
課題③:顧客単価の頭打ち
一度限りの購入で終わる顧客が多い場合、顧客生涯価値(LTV)が低くなります。これは、DM戦略の不足が原因の一つです。
DPS活用によるEC通販DM戦略の全体像
DPSでできることとできないこと
| DPSでできること | 実現方法 |
|---|---|
| バリアブル印刷 | 顧客ごとに異なる割引率・クーポンを印刷 |
| 個別宛名対応 | 購買データから自動抽出した宛名を直接印字 |
| セグメント別DM | VIP顧客、新規顧客、休止顧客ごとに異なるDMを作成 |
| サンプル同梱 | 複数の試供品を無作為にランダム封入 |
| ワンストップ発送 | DM作成→封入→発送まで一括対応 |
DPSを使ったEC通販DM戦略の流れ
- 顧客データ抽出:EC サイトの購買管理システムから、セグメント別の顧客リストをCSV・Excel形式で抽出
- DPS業者へ提供:顧客リスト、DM内容、デザイン、割引内容をDPS代行業者に提供
- バリアブル印刷・設定:DPS業者が「この顧客には50%割引」「この顧客には30%割引」というデータを印刷機に入力
- 自動封入・発送:すべての顧客に異なるDMを自動で封入し、一括発送
- 追跡・成果測定:クーポンコード・割引コードの使用率から、DM効果を測定
EC通販でのDPS活用シーン:5つの具体例
シーン①:新規顧客へのサンプル同梱DM
初回購入者に対して、関連商品のサンプルとセール情報を同梱します。
実例
- 【化粧品EC】新規購入者に、シリーズ商品のサンプルを同梱 → 2回目購入率20%向上
- 【健康食品EC】初回購入者に、別シリーズの試供品+割引クーポンを同梱 → 3ヶ月以内リピート率30%向上
DPS活用ポイント
- ランダム封入で「複数のサンプルをどれか1つ」同梱(ばらつき解消)
- 宛名印字で「〇〇様へのみ」という特別感を演出
- バリアブル印刷で「新規顧客向け30%OFF」という限定割引
シーン②:VIP顧客・高額購入者向け会員限定DM
購買額が高い顧客に対して、VIP限定の新商品情報やプレビュー情報を先行配信。
実例
- 【ファッションEC】年間購買額50万円以上の顧客向けに、新作プレビュー情報+早割クーポン
- 【グルメサイト】リピート頻度の高い顧客向けに、季節限定商品の事前予約案内
DPS活用ポイント
- セグメント別に異なるDMを作成・発送
- 個別割引率を印刷(VIP限定で他顧客より高割引)
- OPP封筒でプレミアム感を演出
シーン③:購入後60日のリピート促進DM
前回購入から一定期間後に、顧客の購買サイクルに合わせてDM送付。
実例
- 【コスメEC】購入後60日目に「使い切りのタイミング」で新商品案内
- 【健康食品】30日分の商品購入者に、30日後に「もう一度いかがですか?」DM
DPS活用ポイント
- バリアブル印刷で「〇〇様の前回購入商品はこちら」と個別情報を掲載
- 個別の割引クーポンで「あなただけの特別価格」を印字
- 顧客の購買履歴に基づいた「関連商品」を自動推奨
シーン④:季節キャンペーンの限定DM
セール・キャンペーン期間中に、顧客属性に基づいた限定DMを送付。
実例
- 【アパレルEC】春物セール時に、過去の購買から「冬物を多く買った顧客」に春物割引DM
- 【食品EC】GW・お正月などの季節に、ギフト需要の高い顧客向けにセット商品案内
DPS活用ポイント
- セグメント別に異なる割引率を設定し、プリント
- 複数の割引クーポンをランダム同梱
- 短納期での対応が可能
シーン⑤:休止顧客の復帰促進DM
過去6ヶ月購入がない顧客に対して、「お帰りなさい」キャンペーンのDM送付。
実例
- 【ファッションEC】最後の購入から6ヶ月以上経過した顧客に「復帰キャンペーン50%OFF」
- 【グルメサイト】休止顧客に「感謝キャンペーン」として初回復帰クーポン
DPS活用ポイント
- 顧客名を個別印字して「特別感」を演出
- 「最後のご購入から6ヶ月ですね」といった個別メッセージ(バリアブル印刷)
- 限定的で高い割引率を設定
DPS活用によるROI計算:EC通販での実例
仮想事例:月間5,000部のDM発送
前提条件
- 月間販売数:1,000件
- 平均購買額:5,000円
- 月間売上:500万円
- 通常リピート率:20%(月間200件のリピート)
DPS DM発送のコスト
| 項目 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| DPS代行費用 | 1部50円 × 5,000部 | 250,000円 |
| デザイン・制作 | 初回のみ(毎月は不要) | 30,000円(初回) |
| 月間合計 | (デザイン不要な場合) | 250,000円 |
DMS効果の期待値
- DM開封率:30%(業界平均)= 1,500人が開封
- 反応率:5%(DM業界平均) = 75件のレスポンス
- 購買転換率:60% = 45件の追加購買
- 平均追加購買額:5,000円 = 225,000円
ROI計算
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 月間DPS費用 | 250,000円 |
| 期待される追加売上 | 225,000円(45件 × 5,000円) |
| 粗利(売上の30%と仮定) | 67,500円 |
| 初月ROI | -182,500円(赤字) |
| 3ヶ月累計ROI | +20,500円(黒字化) |
| 12ヶ月ROI | +162,000円 |
ROI改善のコツ
- セグメント精度を上げる:購買確度の高い顧客層に限定して送付
- 反応率を高める:割引率やクーポンの魅力度を高める
- 規模を大きくする:月5,000部→10,000部にすれば、スケール効果で単価下降
- 継続効果を期待:3ヶ月目以降、効果が累積して黒字化が加速
EC通販DM成功事例
事例①:化粧品EC企業
背景:新規顧客のリピート率が低い(初回購入者の20%のみが2回目購入)
対策:DPSでサンプル同梱DM(新規顧客向け)を月1回送付
結果:
– 2回目購入率:20% → 35%(+75%向上)
– 平均顧客単価:7,500円 → 10,000円
– 年間売上:+450万円
事例②:ファッションECサイト
背景:季節ごとの売上変動が大きく、オフシーズンの売上が低迷
対策:過去購買データに基づいた「季節DM」をDPS発送
結果:
– オフシーズン売上:前年比+30%
– DM経由売上率:全体の15%を占める
– 顧客生涯価値(LTV):30%向上
事例③:グルメ・食品通販
背景:定期購入の解約率が高い(3ヶ月で30%が解約)
対策:DPSで「購入タイミング案内DM」を個別送付
結果:
– 定期購入継続率:70% → 85%
– 解約率:30% → 15%
– 月間売上:+200万円
EC通販DPS導入時の注意点・デメリット
注意点①:小ロット時のコスト高
月間500部程度の小ロットでは、DPSのコスト効率が悪くなります。最低でも月間1,000部以上が目安です。
注意点②:データ形式・フォーマット
EC システムから顧客データを抽出する際、DPS業者の指定フォーマット(Excel、CSV など)に合わせる必要があります。初回は調整に時間がかかることもあります。
注意点③:個人情報管理
DPS業者にデータを提供する際は、プライバシーマーク・ISMS認証取得企業を選ぶことが重要です。
注意点④:反応率が低い可能性
DM反応率は業界・シーズン・内容により大きく変動します。最初の1~3ヶ月は「テスト期間」として、効果測定に注力してください。
EC通販のDPS導入ステップ
Step 1:顧客データ分析
- どの顧客セグメントに送付するのか(新規 / VIP / 休止 など)
- 月間送付部数はどの程度か
- データベースから何を抽出するのか(購買履歴、購買額、地域 など)
Step 2:DPS業者選定・見積
- EC データの扱いに経験がある業者を選ぶ
- 対応数量(小ロット~大ロット)を確認
- 納期(通常納期・特急対応)を確認
- 複数業者から見積を取得
Step 3:テスト発送
- 初回は100~500部のテスト発送を実施
- 反応率、デザイン、品質を測定
- 改善点をリスト化
Step 4:本格運用
- テスト結果を反映して、月間1,000部以上の本格発送を開始
- 成果測定用のコード・クーポンを設定
- 毎月の効果測定を実施
よくある質問(FAQ)
Q1. DPSでEC通販DM送付すると、本当にリピート率が上がるのか?
A. 業界平均では、適切にセグメント化したDM送付で5~15%のリピート率向上が見込めます。ただし、DM内容・割引設定・クオリティにより大きく変動するため、テスト運用での測定が重要です。
Q2. データはどうやって提供する?セキュリティは大丈夫?
A. 通常、CSVやExcel形式で業者に提供します。信頼できるDPS業者はプライバシーマーク・ISMS認証を取得しており、暗号化・ファイアウォール等で保護されています。契約前に「セキュリティ体制」を確認してください。
Q3. 月間何部からDPS利用は採算が取れる?
A. 一般的には月間1,000部以上が採算ラインです。それ以下の小ロットでは、1部あたりのコストが高くなり、自社対応やメール施策の方が効率的な場合もあります。
Q4. DM効果の測定方法は?
A. 以下の方法があります:
– クーポンコードの使用数を追跡
– 割引コードの使用率・売上をGA4やECシステムで計測
– クリック率・反応率を分析
– 顧客IDベースで「DM送付前後の購買パターン」を比較
Q5. 納期はどのくらい?急ぎ対応は可能か?
A. 標準納期は5~10営業日、特急対応で2~3営業日が目安です。大量発送の場合は納期が延びることもあるため、事前に確認してください。
