「会社に手紙を送りたいけれど、宛名の書き方がわからない」「御中と様、どちらを使えばいいの?」—ビジネスシーンで初めて会社宛ての郵便物を送る際、多くの方がこのような疑問を抱きます。
宛名の書き方一つで、ビジネスマナーを理解している印象を与えることもあれば、逆に常識を疑われることもあります。本記事では、会社宛て郵便物の正しい宛名の書き方を、基本ルールから実践的な見本まで徹底解説します。
目次
- 会社宛て宛名の基本ルール
- 封筒の書き方見本(画像付き)
- ケース別宛名の書き方
- よくある間違いと正しい書き方
- ビジネスマナーのポイント
- 大量郵送の効率化方法
1. 会社宛て宛名の基本ルール
「御中」とは?
「御中」は、会社や団体などの組織に対して使用する敬称です。個人ではなく、組織全体に宛てる場合に使います。
御中の意味
「御中」= その組織の中の誰かへ
正式名称:御中(おんちゅう)
用途:法人・団体・部署などの組織宛て
御中を使う場面
✓ 株式会社○○御中
✓ ○○株式会社 人事部御中
✓ ○○商店御中
✓ ○○大学 入試課御中
✓ ○○病院御中
「様」との違い
「様」は個人に対して使用する敬称です。会社名や部署名には使いません。
様と御中の使い分け基本原則
組織・団体 → 御中
個人 → 様
【正しい例】
○ 株式会社○○御中
○ 株式会社○○ 山田太郎様
【間違った例】
✗ 株式会社○○様
✗ 株式会社○○ 営業部様
✗ 株式会社○○御中 山田太郎様
使い分けの原則|5つの鉄則
鉄則1:御中と様は併用しない
✗ 株式会社○○御中 山田様
○ 株式会社○○ 山田様
理由:御中は「組織の中の誰か」を意味するため、
個人名が明記されている場合は不要
鉄則2:組織名のみなら必ず御中
○ 株式会社○○御中
○ ○○商事株式会社御中
○ 合同会社○○御中
※ 会社名だけで担当者名がない場合
鉄則3:部署名も御中
○ 株式会社○○ 営業部御中
○ ○○株式会社 人事課御中
○ ○○商店 総務部御中
※ 部署名は組織の一部なので御中を使用
鉄則4:担当者名がわかれば様
○ 株式会社○○ 山田太郎様
○ 株式会社○○ 営業部 山田太郎様
○ 株式会社○○ 代表取締役 山田太郎様
※ 個人名が明記されている場合は様のみ
鉄則5:ご担当者様は例外的にOK
○ 株式会社○○ ご担当者様
○ 株式会社○○ 人事部 ご担当者様
※ 担当者名不明時の特例表記
(詳しくは後述)
「各位」との使い分け
「各位」は複数の人に同じ内容を送る場合に使用します。
各位の使い方
○ 関係者各位
○ お客様各位
○ 会員各位
✗ 各位様(様は不要)
✗ ○○会社各位(個別郵送には不適切)
各位を使う場面
✓ 回覧文書
✓ 社内メール(複数人宛て)
✓ 案内状(同内容を複数社に送付)
✗ 個別の郵便物(通常は使わない)
2. 封筒の書き方見本(画像付き)
縦書き封筒の場合|基本レイアウト
標準的な縦書き封筒(長形3号)の書き方
【封筒表面】
〒100-0001
東京都千代田区千代田1-1-1
○○ビル5階
株式会社○○商事
営業部御中
〒123-4567
差出人の郵便番号
差出人住所
差出人氏名
配置のルール
宛先:
- 郵便番号:上部中央やや右
- 住所:右側から1/3の位置、縦書き
- 会社名:中央、大きめの文字
- 部署名・御中:会社名の左隣、やや小さめ
差出人:
- 郵便番号:左下
- 住所:宛先より小さめの文字
- 氏名:住所の左隣
文字サイズの目安
宛先会社名:16pt〜18pt(最も大きく)
宛先部署名:12pt〜14pt
宛先住所:10pt〜12pt
差出人情報:8pt〜10pt(小さめ)
横書き封筒の場合|洋封筒
洋封筒(角形2号など)の書き方
【封筒表面】
株式会社○○商事
営業部御中
〒100-0001
東京都千代田区千代田1-1-1 ○○ビル5階
差出人氏名 〒123-4567
差出人住所(市区町村から) 差出人郵便番号
横書きのポイント
✓ 左上から書き始める
✓ 会社名が最上部
✓ 郵便番号・住所は会社名の下
✓ 差出人は右下または裏面
✓ 文字は左揃え
裏面の書き方
縦書き封筒の裏面
差出人郵便番号 〒123-4567
差出人住所
東京都○○区○○1-2-3
差出人氏名
山田太郎
封字:〆 または 緘
封字の種類
〆(しめ):最も一般的
緘(かん):フォーマルな文書
封(ふう):やや古風
×:不適切(バツ印に見える)
大きい封筒(角形封筒)の書き方
角形2号封筒の例
【表面】
〒100-0001
東京都千代田区千代田1-1-1
○○ビル5階
株式会社○○商事
人事部 採用ご担当者様
〒123-4567
差出人郵便番号
差出人住所
差出人氏名
角形封筒のポイント
✓ 宛先は中央やや上
✓ 差出人は右下
✓ 「履歴書在中」などの記載は左下または中央下
✓ 赤枠で囲むと目立つ
「○○在中」の書き方
【左下に記載】
履歴書在中
請求書在中
見積書在中
重要書類在中
※ 赤ペンまたは朱肉で記載
※ 四角で囲む
3. ケース別宛名の書き方
ケース1:会社名のみの場合
担当者も部署もわからない、または会社全体に宛てる場合です。
基本形
株式会社○○商事御中
✓ 会社名の後に御中
✓ 株式会社は正式名称で
✓ (株)などの略称は使わない
注意点
【正しい】
○ 株式会社○○御中
○ ○○株式会社御中
○ 合同会社○○御中
○ 医療法人○○御中
【間違い】
✗ (株)○○御中(略称NG)
✗ 株式会社○○様(様はNG)
✗ ○○会社御中(株式会社を省略NG)
前株・後株の確認
前株の例:株式会社○○商事
後株の例:○○商事株式会社
※ 必ず正式名称を確認すること
※ 会社のWebサイトや名刺で確認
ケース2:部署宛ての場合
特定の部署に宛てる場合は、会社名と部署名の両方を記載します。
基本形
株式会社○○商事
営業部御中
または
株式会社○○商事
人事部 採用担当御中
書き方のルール
会社名
部署名御中
✓ 会社名と部署名は改行
✓ 部署名の後に御中
✓ 会社名に御中は付けない
よくある部署名の例
○ 営業部御中
○ 総務部御中
○ 人事部御中
○ 経理部御中
○ カスタマーサポート部御中
○ お客様相談室御中
○ 広報部御中
課・係がある場合
株式会社○○商事
総務部 総務課御中
株式会社○○商事
営業部 第一営業課御中
ケース3:担当者名がわかる場合
担当者の名前がわかっている場合は、個人名に「様」を付けます。
基本形
株式会社○○商事
山田太郎様
または
株式会社○○商事
営業部 山田太郎様
書き方のルール
会社名
(部署名)個人名様
✓ 個人名に様を付ける
✓ 会社名や部署名に御中は付けない
✓ 御中と様を併用しない
間違いやすいパターン
【正しい】
○ 株式会社○○ 山田太郎様
○ 株式会社○○ 営業部 山田太郎様
【間違い】
✗ 株式会社○○御中 山田太郎様
✗ 株式会社○○ 営業部御中 山田太郎様
✗ 株式会社○○ 山田太郎殿
役職がある場合
株式会社○○商事
代表取締役社長 山田太郎様
株式会社○○商事
営業部長 山田太郎様
株式会社○○商事
営業部 部長 山田太郎様
※ 役職名は敬称ではないので様を付ける
ケース4:担当者名がわからない場合
担当者名がわからない場合は、以下の方法があります。
方法1:ご担当者様(最も一般的)
株式会社○○商事
営業部 ご担当者様
株式会社○○商事
人事部 採用ご担当者様
✓ 部署名がわかる場合に推奨
✓ ビジネスマナーとして許容される
方法2:御中を使う
株式会社○○商事
営業部御中
✓ 部署全体に宛てる場合
✓ より形式的な印象
方法3:役職名で送る
株式会社○○商事
営業部長様
株式会社○○商事
採用ご担当責任者様
✓ 役職者に確実に届けたい場合
✓ やや堅い印象
どの方法を選ぶべきか
一般的な問い合わせ:ご担当者様
採用応募:採用ご担当者様
重要な提案:部長様、責任者様
不明な場合:部署名御中
ケース5:役職者宛ての場合
社長や部長など、役職者に宛てる場合の書き方です。
役職名の正しい書き方
【パターンA:役職を前に】
株式会社○○商事
代表取締役社長 山田太郎様
【パターンB:役職を後に】
株式会社○○商事
山田太郎 代表取締役社長様
※ どちらも正解だが、Aの方が一般的
主な役職名の例
代表取締役社長 山田太郎様
専務取締役 山田太郎様
常務取締役 山田太郎様
取締役 山田太郎様
営業部長 山田太郎様
課長 山田太郎様
係長 山田太郎様
注意点
【正しい】
○ 代表取締役社長 山田太郎様
○ 営業部長 山田太郎様
【間違い】
✗ 代表取締役社長 山田太郎殿
✗ 山田太郎社長様(二重敬語)
✗ 社長 山田太郎様(正式役職名を使う)
「殿」は使わない
現代のビジネスマナーでは「殿」は不適切
理由:
- 上から目線の印象
- 官公庁の古い習慣
- 現代では「様」が標準
ケース6:複数人宛て・連名の場合
複数の担当者に宛てる場合の書き方です。
2名連名の場合
株式会社○○商事
営業部
山田太郎様
佐藤花子様
✓ それぞれに様を付ける
✓ 縦に並べる
✓ 横に並べる場合はスペースを空ける
3名以上の場合
【方法1:全員記載(3名まで)】
株式会社○○商事
営業部
山田太郎様
佐藤花子様
鈴木一郎様
【方法2:代表者+ご一同様】
株式会社○○商事
営業部
山田太郎様 ご一同様
【方法3:部署名御中】
株式会社○○商事
営業部御中
※ 4名以上の場合は方法2か3を推奨
家族宛ての場合(個人)
山田太郎様
山田花子様
または
山田太郎様 ご家族様
※ ビジネスでは稀だが、念のため
4. よくある間違いと正しい書き方
間違い1:御中と様の併用
❌ 間違った例
株式会社○○商事御中
山田太郎様
⭕ 正しい例
株式会社○○商事
山田太郎様
理由:
個人名が明記されている場合、
御中は不要。様のみを使用。
間違い2:会社名に様を付ける
❌ 間違った例
株式会社○○商事様
⭕ 正しい例
株式会社○○商事御中
理由:
会社や組織には「御中」を使用。
「様」は個人にのみ使用。
間違い3:株式会社の略記
❌ 間違った例
(株)○○商事御中
㈱○○商事御中
⭕ 正しい例
株式会社○○商事御中
理由:
正式な郵便物では略称は使わない。
必ず「株式会社」と正式名称で記載。
間違い4:前株・後株の間違い
❌ 間違った例
【本来は前株なのに】
○○商事株式会社御中
【本来は後株なのに】
株式会社○○商事御中
⭕ 正しい例
正式名称を確認して記載
確認方法:
- 会社のWebサイト
- 名刺
- 登記簿謄本
- 会社案内
間違い5:役職名を敬称と勘違い
❌ 間違った例
山田太郎社長
山田太郎部長
⭕ 正しい例
代表取締役社長 山田太郎様
営業部長 山田太郎様
理由:
役職名は敬称ではないため、
必ず「様」を付ける。
間違い6:二重敬語
❌ 間違った例
山田太郎社長様
山田部長様
○○先生様
⭕ 正しい例
代表取締役社長 山田太郎様
営業部長 山田太郎様
○○先生(先生は敬称なので様不要)
理由:
「社長様」「部長様」は二重敬語。
正式な役職名を使用する。
間違い7:部署名に様を付ける
❌ 間違った例
株式会社○○商事
営業部様
⭕ 正しい例
株式会社○○商事
営業部御中
理由:
部署は組織なので「御中」を使用。
「様」は個人にのみ使用。
間違い8:封筒の差出人を省略
❌ 間違った例
【表面に宛先のみ、差出人なし】
⭕ 正しい例
表面または裏面に必ず差出人を記載
理由:
- 配達不能時の返送先が必要
- ビジネスマナーとして必須
- 信頼性の証明
間違い9:郵便番号のハイフン忘れ
❌ 間違った例
〒1000001
⭕ 正しい例
〒100-0001
理由:
郵便番号は7桁で、
3桁-4桁の形式が正式。
間違い10:住所の番地表記
❌ 間違った例
東京都千代田区千代田1の1の1
東京都千代田区千代田1/1/1
⭕ 正しい例
東京都千代田区千代田1-1-1
または
東京都千代田区千代田一丁目一番一号
理由:
正式な住所表記は
「-(ハイフン)」または漢数字。
5. ビジネスマナーのポイント
筆記具の選び方
推奨する筆記具
【最適】
黒の万年筆:最もフォーマル
黒のボールペン:一般的、実用的
黒の筆ペン:丁寧な印象
【許容範囲】
黒のサインペン:読みやすい
黒の油性ペン:太字で明瞭
【NG】
✗ 青ペン(カジュアルすぎる)
✗ 鉛筆・シャープペン(消える)
✗ 赤ペン(警告の印象)
✗ 蛍光ペン(非常識)
✗ 薄い色(読みにくい)
インクの選び方
✓ 黒インク:最も一般的
✓ 濃紺インク:やや柔らかい印象
✓ 耐水性:雨に強い
✗ 水性ペン(にじみやすい)
✗ 消せるボールペン(ビジネスNG)
丁寧な字の書き方
読みやすい文字のポイント
1. 大きさ
- 宛先会社名:大きく(16pt相当)
- 宛先部署名:中くらい(12pt相当)
- 差出人:小さめ(10pt相当)
2. 間隔
- 文字間:詰めすぎない
- 行間:適度に空ける
- 余白:封筒の20%程度
3. 筆圧
- 一定の強さで
- 強すぎず弱すぎず
- かすれないように
4. 丁寧さ
- 楷書で書く
- 略字は使わない
- とめ・はね・はらいを意識
字に自信がない場合
✓ ゆっくり丁寧に書く
✓ 下書きをする
✓ 定規を使う(直線が綺麗に)
✓ 宛名印刷を利用する
✓ 印刷会社に依頼する
封筒の選び方
ビジネス用封筒の種類
【縦書き封筒】
長形3号:最も一般的(A4三つ折り)
長形4号:やや小さめ(ハガキサイズ)
【横書き封筒】
角形2号:A4が折らずに入る
角形3号:B5が折らずに入る
【洋封筒】
洋形長3号:洋風ビジネス文書
封筒の色
✓ 白:最も一般的、フォーマル
✓ クリーム色:柔らかい印象
✓ 薄いグレー:落ち着いた印象
✗ カラフルな色(ビジネスNG)
✗ 柄入り封筒(カジュアルすぎ)
封筒の質
上質紙:一般的なビジネス文書
ケント紙:やや厚手、高級感
クラフト紙:カジュアル、書類向け
重要書類・応募書類:
上質紙またはケント紙を推奨
封の仕方
正しい封の手順
1. 書類を封筒に入れる
2. フラップ(フタ)を閉じる
3. 糊付けする
4. 封字を書く
封字の種類
〆(しめ):最も一般的
締:やや改まった場面
封:フォーマル
緘(かん):非常にフォーマル
✗ ×:バツ印に見えるのでNG
✗ シール:ビジネスでは不適切
封字の位置
【縦書き封筒】
フラップの中央に〆
【横書き封筒】
フラップの右側に〆
投函前のチェックリスト
必ず確認すべき項目
□ 郵便番号は正しいか
□ 住所は完全か(ビル名・階数含む)
□ 会社名は正式名称か
□ 前株・後株は正しいか
□ 御中・様の使い分けは適切か
□ 差出人情報は記載したか
□ 切手は貼ったか(または料金別納マーク)
□ 封はしたか
□ 封字は書いたか
□ 中身は入れたか(最重要!)
よくある入れ忘れ
✗ 書類を入れ忘れた
✗ 返信用封筒を入れ忘れた
✗ 切手を貼り忘れた
✗ 別の人の書類を入れた
→ 封をする前に必ず中身を確認!
送付のタイミング
適切な投函タイミング
✓ 午前中の集荷前:当日消印
✓ 締切がある場合:余裕を持って
✓ 月曜着狙い:木曜・金曜投函
✗ 金曜夕方:月曜配達になる可能性
✗ 祝日前:配達が遅れる
✗ 年末年始:大幅に遅延
速達が必要な場合
通常郵便:2〜3日
速達:翌日〜翌々日
レターパック:翌日
料金:
定形郵便 84円 + 速達料金 260円
= 合計344円
6. 大量郵送の効率化方法
宛名印刷の活用
手書きが困難な大量郵送では、宛名印刷が効率的です。
宛名印刷の方法
方法1:自社プリンターで印刷
- Excelで宛名リスト作成
- Wordの差し込み印刷機能
- ラベルシール印刷
方法2:印刷会社に依頼
- Excelリストを送付
- 封筒に直接印刷
- 料金:+5〜10円/通
Excelリストの作り方
列A:郵便番号(例:100-0001)
列B:住所1(都道府県・市区町村)
列C:住所2(番地・ビル名)
列D:会社名(株式会社○○)
列E:部署名(営業部)
列F:役職名(部長)
列G:氏名(山田太郎)
列H:敬称(様/御中)
差し込み印刷の手順(Word)
1. Wordで封筒テンプレート作成
2. 「差し込み文書」タブを選択
3. 「宛先の選択」→ Excelファイル指定
4. 「差し込みフィールドの挿入」で配置
5. 「完了と差し込み」で印刷実行
最後に:ビジネスマナーが信頼を生む
たった一通の郵便物でも、宛名の書き方一つで相手に与える印象は大きく変わります。正しい敬称の使い方、丁寧な字、適切な差出人情報—これらすべてが、あなたのプロフェッショナリズムを示す証となります。
大量発送が必要な場合は、専門業者に任せることで、時間とコストを大幅に削減できます。本業に集中しながら、プロの品質で確実に届ける。それが現代のビジネスにおける賢い選択です。
